うなデザインのストーリーが立てられる。このような、デザインのストーリーがあれば、景観計画は無理なく調和の取れたものとなりやすい。
このように、擬岩を用いたデザインでは、必然性が非常に重要となる。周辺に岩場のない砂浜海岸に岩が忽然として存在してしまうのは、多くの場合不自然であり、必然性のないデザインである。
岩がある必然性として、周辺および陸域の岩の存在、つまり、崖なり磯なりがあり、その延長上に海面から頭を出した岩の存在がある。例えば、突堤と人工リーフ、離岸堤等との組合せで海岸整備を考える場合、突堤を機として整備し、その延長上に沖合の岩場(人工リーフ端部の標識や離岸堤を岩場とする)を持ってくるように違和感のないようにすることが重要である。
4-3. 擬岩によるデザイン側および施工例
デザイン例として突堤の例を示す。Fig-6は全体を岩場にしたものであるが、規模が大きい場合、突堤の周辺にも岩礁が点在していないと、自然らしさが感じられにくく、異物感を生ずる。むしろ、Fig-7のように部分的な岩場に変更すると、見た目にやさしい感じが出る。これは、もともと点々と存在していた岩場を利用して突堤を施工したというストーリーである。
Fig-8は延長の長い傾斜護岸にポイント的にデザインした例である。単調な海岸線に変化をつけ、分節効果やアイストップの効果を持たせようとしたもので、岩場には人を集める効果がある。
次に施工事例を示す。Fig-9は岩礁性海岸の護岸において、汀線へのアクセス道を擬岩で修景した実施例である。背後にある岩場や海中に点在する岩を参考に構造物をデザインしたもので、背後の岩場と形状・テクスチャー・色彩を調和させている。
Fig-10は、既存の防波堤全体を修景した例である。防波堤のような細長く、直線的な構造物に対しては、自然の岩場らしい輪郭線を表現するのは、種々の制約条件から難しいことがある。
人工リーフのように海中に没した構造物では、天端水深が浅いことから、構造物の存在を航行する船舶等に示すための標識として、人工的なブイが設置されることがある。Fig-11は周辺の地形を考慮して、ブイの代わりに小さな岩場を擬岩で施工したものである。岩礁海岸であるため、周辺地形に完全に溶け込んでおり、技術的には、このように波力を受ける水深帯でも使用が可能となってきた。
4-4.空間演出
構造物を自然な岩場に見せようとするとき、視点場と見え方の関係が重要である。視点場が撒く近傍の場合は、表面のテクスチャーが主に目立つ。数10m離れていれば、岩場の表面を構成している面とそれを区切るクラックや節理が目立つことになり、クラックや節理の方向や大きさ等が現地の岩場と連続性が重要になる、視点場か
Fig-6 Design example 1 of jetty
Fig-7 Design example 2 of jetty
Fig-8 Design example of revetment
Fig-9 Example of seawall
前ページ 目次へ 次ページ